はじめに:『モチベーション3.0』を読んで
ダニエル・ピンクの『モチベーション3.0 – 持続する「やる気」をいかに引き出すか』を読みました。
本記事では、やる気を引き出し、モチベーションを持続させる方法、そして、プロフェッショナルになるために必要なことをお伝えします。
著者ダニエル・ピンクのプレゼンテーションはTEDでも公開されています。興味のある方はぜひご覧になってください。
やる気を引き出し持続させる方法
結論から述べると、やる気を引き出し持続させるには「内発的動機づけ」を発揮することです。
内発的動機とは、私たち人間が持つ内なる動機であり、心の底から自然に引き起こされるやる気のことです。
内発的動機づけを発揮するコツは、結果を追い求めるのではなく、そのプロセスを楽しむことです。私たちは、自分自身が心の底からやりたいこと、楽しめることに取り組んでいる時にこそ、内発的動機づけを発揮することができます。
内発的動機づけの反対に「外発的動機づけ」があります。外発的動機づけは「これをしたら、あれをあげよう」といった交換条件付きの報酬により引き起こされるやる気です。アメとムチによる動機づけとも言えます。
外発的動機づけの限界は科学的に証明されています。アメとムチは比較的単純なルーチンワークでは高い効果を発揮しますが、複雑で創造性が求められる活動では、内発的動機づけが効果的です。
モチベーション3.0とは何か
『モチベーション3.0』の著者ダニエル・ピンクは、コンピュータと同様に、社会にも人を動かすためのモチベーションの基本ソフト(OS)があると考えています。彼が提唱する3つのモチベーションのOSをご紹介します。
①モチベーション1.0:人間は生物的な存在なので、生存のために行動する
②モチベーション2.0:人間は報酬を求める一方で罰を避けたいという動機で行動する
③モチベーション3.0:人間には「学びたい、創造したい、世界をよくしたい」といった第三の動機づけがある
ダニエル・ピンクは、モチベーション3.0は、①自律性、②マスタリー(熟達)、③目的の3つの要素から成ると考えています。
- 自律性:自分の人生を自ら導きたいという欲求のこと
- マスタリー(熟達):自分にとって意味のあることを上達させたいという衝動のこと
- 目的:自分よりも大きいこと、自分の利益を超えたことのために活動したい、という切なる思いのこと
モチベーション2.0(アメとムチ)の限界を超えて、自分の内面から湧き出るやる気に基づき行動するには、モチベーション3.0へのアップグレードが必要です。
プロフェッショナルになるために
ここでは、やる気を引き出し持続させることで、いかにしてプロフェッショナルになるかを解説します。
プロフェッショナルになるには、驚くほど単調な練習を、驚くほどしつこくやることが求められます。そのためには、忍耐力と情熱を持ち、自分にとって意味あることに没頭することが重要です。
心理学者のミハイ・チクセントミハイが提唱する「フロー」の概念を理解することで、没頭状態がどのような時に発生するかに対する理解を深めることができます。
フローとは、取り組んでいる課題が本質的に自分の能力と整合している場合の最適経験のことです。フロー状態にある時、私たちは没頭状態になっています。フローについてさらに知りたい方は、ミハイ・チクセントミハイの代表作『フロー体験 喜びの現象学』がおすすめです。
没頭は、モチベーション3.0の構成要素であるマスタリー(熟達)、「自分にとって意味あることを上達させたいという衝動」のきっかけになります。あることに没頭することで、私たちはその道を極めたプロフェッショナルへの道を歩み始めます。
モチベーション3.0のアプローチに基づき、①自律的かつ自己決定的に、②熟達への道を歩み、③高邁な目的を掲げて行動する人は、プロフェッショナルとして高い成果を上げ、多くのことを達成できます。
特に、モチベーション3.0の要素である目的は、人生を活性化させます。利益の最大化よりも、目的の最大化に重点を置くことで、より大きな成功を手に入れることができるでしょう。
まとめ:本書からの学び&明日から行動できること
やる気を引き出し持続させるには、モチベーション3.0のアプローチを採用して、内発的動機づけを発揮することが重要です。
モチベーション3.0の3つの要素に関連付けて、最後に、明日から行動できることをまとめます。
- 「やらねばならない」ではなく「やりたい」(もしくは「やってもよい」)という思いで行動する。意思決定の主導権を自分に取り戻す → ①自律
- 1日の終わりに「昨日よりも今日は進歩したか」を自分に問う。他人との比較ではなく自分自身の変化・上達度合いに目を向ける → ②マスタリー(熟達)
- 「毎朝自分を目覚めさせるもの、夜自分を眠れなくさせるものは何か?」という質問に対する答えを書き出す。時おりそれらを確認して人生の羅針盤とする → ③目的
芸術家が芸術作品にアプローチするように、自分の人生にアプローチしましょう。モチベーション高く、一生涯にわたって続く学びに身を投じることで、その道を極めたプロフェッショナルを目指してみませんか。